一票の格差裁判「無効判決」を考える
この記事に法律の専門家の方からコメントをいただきました。
一票の格差裁判で初の選挙「無効」判決
http://h09.cocolog-nifty.com/blog/2013/03/post-f8cd.html?cid=96399100#comment-96399100
どのように記事にしようかあれこれ考えましたが、まずはそのまま掲載するのが良いと思いましたので、記事内での私のコメントは差し控えます。
これまで考察してきたものに参考になるだけでなく、新たな見方もできそうな、中身の濃いものです。ぜひご一読ください。
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今回の一連の違憲判決に対する報道には疑問を感じます。
原告団の弁護士の方とは考え方が異なりますが、同じ法律家としてコメントさせて下さい。
まず、この問題について、多くの方が誤解又は意図的に情報を捻じ曲げている感が強いので、この点について整理させて下さい。
①違憲判断と三権分立について
1票の格差の問題は、選挙制度に関する問題、つまり民主主義の根幹に関わる制度です。つまり、この問題は、選挙によって選出された立法府、行政府がその裁量によって判断するべき事項であって、選挙によって選出されていない司法府の判断には本質的になじまないものです。このような民主主義に関する訴訟類型について司法判断を避ける手法は従来から判例法理で用いられてきました。(学説上、統治行為論と呼ばれるものです。)
ただし、裁判所は、民主主義(多数決)ではなく、自由主義(少数派保護)を守る存在ですから、憲法14条1項は、投票価値の平等も保障すると判断(1人1票とまでは判断していない)し、従来から1票の格差について司法判断を行ってきました。
その点で司法判断を尊重せよという論調は理解できるものではあります。しかし、だからといって、民主主義の基盤のない裁判所が、選挙自体を無効にするという判決は、やり過ぎとしか思えません。従来通り、違憲状態だが、事情判決の法理の適用によって無効とせずに、区割り改定を促すべきでした。
②事情判決について
違憲なのに無効ではないとは何事だ!と論調されていますが、これは、行政事件訴訟法の事情判決の法理に基づくものです。つまり、違憲・違法な状態であっても、これを無効とすることによってより大きな悪影響が出る場合は、違憲・違法を宣言するだけに留めて、無効とはしないとするものです。憲法訴訟でも行政訴訟でも行われています。なぜ、1票の格差についてのみ非難の対象になるのか不思議です。
また、衆議院選挙の1票の格差問題で最高裁が違憲判断したのは過去2件あり(いずれも事情判決によって選挙自体は無効にせず)、仮に最高裁が違憲判断をしたとしても、今回が初めてではありません。
現行小選挙区制で初めてとはいえ、下級審の判断でこれほどまでに違憲判断がクローズアップされたのはなぜなのか非常に不思議です。
③今回の違憲判決について
従来、衆議院の1票の格差は、1対3未満であれば、合憲であるとの判断がなされてきました。3倍未満で違憲状態と判断されたのは平成23年の最高裁判決(平成23年3月23日、2.3倍で違憲)で、民主党が政権をとった時の衆議院選挙です。この際は、報道各社が今現在のような大々的な報道をすることはありませんでした。時の政権が違憲無効な政権だという評論家は私が知る限りはありませんでした。
今回の違憲判断は、前回の衆議院選挙において違憲状態に達していて合理的期間内に是正(特に一人別枠方式を問題視)を求めていたにもかかわらず、これをせずに選挙をしたことを問題としたもので、選挙前から違憲判決が出ることは予想されていました。
従来は、違憲判断が出た場合は、次回選挙までに必ず区割りを改めて選挙をしていたにもかかわらず、今回はいわば違憲判断を無視して、選挙をしたからです。
しかし、この判決を無視して、区割りをせずに選挙をしたのは他でもない当時の民主党政権です。この点で現在の報道状況は何か意図的なものを感じずにはいられません。
また、一人別枠制度を撤廃すれば(一人一票に近づける)、日本の人口集中状態を考えると、必ず地方選出の議員は減ります。つまり、人口の多い都市部の人間の意向だけで国政が決定されることになります。現状、批判している方は、これを容認しているのでしょうか?
以上の通り、①違憲判断は初めてではないこと、②従来から区割り改正は行ってきたこと、③事情判決は日常的になされていること、④司法判断がここ最近急激に厳しくなっていること、⑤今回の違憲判断が前回の選挙から区割りを行っていないことに起因すること、⑥無効判決は民主主義の原則からいって疑念が生じること等の問題点が全く議論されていない点で現在の報道姿勢、世論に強い懸念を感じています。
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コメント
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私が興味を持った箇所(どのような理由で興味をもったかは様々です)
>>>ただし、裁判所は、民主主義(多数決)ではなく、自由主義(少数派保護)を守る存在
>>>民主主義の基盤のない裁判所が、選挙自体を無効にするという判決は、やり過ぎとしか思えません。
>>>下級審の判断でこれほどまでに違憲判断がクローズアップされたのはなぜなのか非常に不思議です。
>>>3倍未満で違憲状態と判断されたのは平成23年の最高裁判決(平成23年3月23日、2.3倍で違憲)で、
>>>民主党が政権をとった時の衆議院選挙です。この際は、報道各社が今現在のような大々的な報道をすることはありませんでした。
>>>時の政権が違憲無効な政権だという評論家は私が知る限りはありませんでした。
>>>一人別枠制度を撤廃すれば(一人一票に近づける)、日本の人口集中状態を考えると、
>>>必ず地方選出の議員は減ります。つまり、人口の多い都市部の人間の意向だけで国政が決定されることになります。
投稿: cocologh09 | 2013年3月29日 (金) 03時31分
>>>時の政権が違憲無効な政権だという評論家は私が知る限りはありませんでした。
これはRKブログだけでなく、表のマスコミまでこの論調は???と思ったこととつながります。
今の政権を「違憲無効」とか、「不当」などと評価するのは筋違いでしょう。
何年か前に千葉ロッテマリーンズがパリーグ3位からクライマックスを勝ちあがって日本一になりました。
それに対して千葉ロッテマリーンズに「不当」だという評価をするのは適切でしょうか?
パリーグ3位から日本一になれる可能性のあるルールを作ったプロ野球機構と、戦ったチームは別です。
もしリーグ優勝チーム以外から日本一が誕生することが不当だと感じるなら、それはルールをつくった人たちに向けられるものであって、チームや選手に向けられるものではありません。
これと同じで今の政権や総選挙で勝利した自民党に「不当」だとか「責任」を持ち出すのは筋違いです。
責任があるとすれば、前政権の民主党と、野党としての自民党(他の政党も)のはずであり、現政権は決められたルール内で勝っただけのチーム・選手の立場ですから関係ありません。
ここに意図的な話のすり替えがあると私は思います。
投稿: cocologh09 | 2013年3月29日 (金) 03時45分
<1票の格差>広島県選管が最高裁に上告へ
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130329-00000079-mai-soci
広島県選挙管理委員会は29日、昨年の衆院選をめぐる1票の格差訴訟で25、26両日の広島高裁判決を不服とし、最高裁に上告する方針を決めた。
広島高裁は25日、広島1区と2区について、初の無効判決を言い渡し、26日は無効請求は棄却したが違憲としていた。4月1日に国に意向を伝え、上告手続きに入る。
同県選管の橋本宗利委員長は、25日の判決が選挙無効の理由として「合理的期間内に格差を是正しなかった」としたことに「(格差の原因になっている)
1人別枠方式の廃止は既に決まっており、小選挙区の『0増5減』も対応がなされている。合理的期間は超過していない」と反論した。【中里顕】
投稿: cocologh09 | 2013年3月29日 (金) 23時51分
このコメントがされた記事にコメントしましたが、一部再掲。
法律家としての意見としては至極もっともな話だと思います。
一市民の感想としては「裁判所も法律に興味を示したのか」
この思いの原点は3.11の汚染問題で東京地裁が飛散した放射性物質を無主物とした事。
最高裁の裁判官の投票で「不適当と思う人に×を付ける」日本人には心理的抵抗がある方法を
共用している事。その結果として誰も不的確に成らない事実がある。(巧妙な保身の仕掛け)
他にも憲法違反や放送法違反など社会的に大きいな出来事に対し、何も言わない。
法曹界への信用や期待は、余りなく「放置国家」と言う感想しか持てない。
③事情判決は日常的になされていること、
一般市民との乖離した感情で勝手に事情を判断する傲慢さ。
法的には何ら間違いではないでしょうが、市民意識との乖離が激しく、選挙無効の判決は画期的
と思わざるを得ません。市民感覚とのギャップを埋めて行く必要が法曹界に必要だと私は思います。
それがなければ本当の「放置国家」に成ると思っています。
この機会を利用してギャップを埋める方向で話が進めばよいと思っています。
投稿: 通行人311 | 2013年3月30日 (土) 01時17分
とても勉強になるコメントと感じました。日頃から何事につけても「専門の人から観たらどう捉えるのだろう」ということに関心があります。一般の人と専門の人では認識にズレがあるのは当たり前、ではそのズレは具体的にどういうところなのか、と明確にしていくことはどちらにとっても意味のあることだと考えています。
私自身が門外漢の為、一般的と思われる学説、通説及びその解釈などについては良く判断できないのですが、それでも「これは」と思う個所をいくつも感じました。このコメントして下さったなおき様は、専門でありながら一般の人に歩み寄ろうとしてくれている、「良心的な方だなぁ」と思いました。
「これは」と感じたた個所をcocologh09さまが全く同じに挙げたので少し驚いています。少し論点がズレますが(大幅かな)、この違憲選挙無効判決には、法律のそのものに関連する問題だけでなく、政治的な思惑と、その思惑を実現する為に実際の行動に移し始める決意のようなものを感じています。これは私の妄想レヴェルの事ですが(スレがなおき様のきちんと考察されたコメントなので、お恥ずかしいという気持ちになります)、その思惑の大事なポイントのなかに道州制が入っているのではないか、そのポイントの為には自民さえ捨て駒、本命は「維新」や「みんな」(あるいはそれに類したもっと先鋭化した政党を作って)、そこに政権運営をさせようとしているのではないか。もしそうだとすれば、それは何故なのか?という所が思い浮かばないのです。やはり妄想ですね。
投稿: ドーナツ盤と絶滅危惧種 | 2013年3月30日 (土) 01時57分
ドーナツ盤と絶滅危惧種さんの妄想は私の妄想でもあります。
選挙制度だけの問題なのか、それとも日本国の根本を覆すほどの何かが想定されているのか。
何れにしろ選挙のやり直しはありえないので、先の狙いのためであることは間違いないでしょう。
妄想ではないと思います。
投稿: cocologh09 | 2013年3月30日 (土) 02時19分
チョット宣伝してきました。
http://naoyafujiwara.cocolog-nifty.com/ipodcasting/2013/04/2013-207a.html
投稿: 通行人311 | 2013年4月 2日 (火) 23時18分
>チョット宣伝してきました。
ありがとうございますm(_ _)m
共産党の動きが怪しくなってきたのでまた制度関連の記事を書こうかと思っていますが、旬の池口恵観を先にします。
もっとも、RKブログはもう尻すぼみ?
池口恵観との関連についてテレビ報道以上に誰も調べようとしない不思議さ。
一緒に写真に写っている人物の名前すら記事にもコメントにも出てこない。
追求する気があるのか疑問です。
投稿: cocologh09 | 2013年4月 2日 (火) 23時35分