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2013年10月 1日 (火)

「水伝」授業を行った小学校の校長・教頭への手紙

「水伝」授業を行った小学校の校長・教頭への手紙
http://homepage3.nifty.com/iromono/mizuden.html

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●●小学校校長・教頭殿

平成19年6月21日(木)

前略

 △年□組の××の父です。現在私は、琉球大学理学部物質地球科学科講師として、物理学を教えています。先日の授業参観における授業の内容につきまして、場所は違えども教育に携わる者として、また保護者としての立場からも、どうしても申し上げておくべきことがありましてお手紙させていただきました。

 息子は△年□組に在籍しておりますが、息子の受けている授業を参観しておりましたところ、△年◆組の○○先生による道徳の授業がたまたま耳に入り、その内容に非常に残念な気持ちになりました。と申しますのも、全国的に問題になっているニセ科学授業だったからです。

 その授業内容とは、水の結晶を作る時、その結晶を作る前に見せたり聴かせたりしたものによって結晶のできかたに違いがある、ということを結晶の写真を見せながら説明しておられました。私が聞きました具体的内容は


(A)水にクラシック音楽を聴かせるときれいな結晶ができるが、ロックを聴かせるときれいな結晶ができない。

(B)「ありがとう」と書いた容器の結晶はきれいになるが「ばかやろう」と書いた容器の結晶はきれいにならない。

(C)人間の身体の70%は水だから、人間の身体も言葉に影響を受ける。


などでした。その後、子供たちに「いい言葉を使うことは大事である」と教えておられました。

 この授業は誠に残念ながら、添付しました資料の毎日新聞の記事にて、問題のある授業の例として紹介されている授業そのものです。2006年3月の日本物理学会では「『ニセ科学』とどう向き合っていくか?」というタイトルで
シンポジウムが開かれましたが、その中でも典型的な「ニセ科学」として紹介され、批判の的となったものでもあります。

(その他ネットでの親の反応などの添付資料に関する説明、略)

 この話の問題点として、まず実験方法が全く適切ではありません。結晶が「きれい」「きれいでない」という判断は主観の入りやすい判断であるのみならず、実験者自身が「これは『ありがとう』という言葉を見せた水だ」と思いながら結晶を観察している時点で、科学実験に必要な「客観性」を欠いています。このような方法での実験は、実験者の「こういう結果が出て欲しい」と思っている願望に沿った結果が出てきてしまうという危険性が大いにあります。人間がからむ実験ではこのような実験方法は避けるべきであるということは、心理学や生態学では基本中の基本とされている注意点ですが、科学的思考をしない実験者は、そんな注意を全く払っていません。

 (A)については科学的でないという以前の問題です。クラシックがよくてロックが悪いというのは単なる個人の趣味嗜好の問題です。学校の授業の中で善悪と趣味の問題を結びつけてしまうのはどうかと思います。生徒の中にもロックが好きな子はいるかもしれません。趣味の問題を「きれいな結晶ができない=悪い」と決めつけることは道徳として正しいとは思えません。全体にこの授業では「きれいな結晶=善」で「きれいでない結晶=悪」という単純な割り切りが見られますが、美醜と善悪を単純に結びつけることにも疑問を感じます。

 (B)については、結晶の作る前の水の容器に紙を貼ったところでそれが水に影響を与えるはずもないというのが現代科学における常識です。もし万が一、常識を覆すほどの何かが起こっているというのなら、検証には慎重な実験が必要ですが、この実験はとてもそれだけの検証に耐えません。

 (C)については、事実(人間の身体の70%は水)と結論(だから人間の身体も言葉に影響される)の間に、筋道だった論理というものがありません。冷やして結晶作ってきれいでした、なんていうずさんな実験で人間の心がわかるのなら、生物学者も心理学者も苦労はありません。この話は、ずさんな実験にずさんな論理もどきを重ねて、ムリヤリに結論を押しつけているものでしかありません。要するに、単なるデタラメということです。

 つまり、この授業の中で「実験」と呼ばれているものは、実験者の「こうであったらいいな」という願望を表現しているに過ぎないのです。この実験者は、自分の表現したいことのためなら、間違ったことでも利用する、あるいは嘘を平気でつく、そうやって本を書いているわけです。昨今問題となったテレビ番組の「やらせ」や、宗教団体勧誘などで行われる詐欺行為と同質のものなのです。このような態度で行われた「実験もどき」が道徳の教材として、果たして適切でしょうか?-私にはとてもそうは思えません。

 ○○先生の授業の意図したことは「言葉を大切にしよう、悪い言葉は人を傷つけるから使わないようにしよう」ということであることは私にも理解できます。子供たちにもよく伝わっていたかもしれません。しかし、そのために使われた題材に間違いがあるとなると、授業で教えたかったこと自体まで正しく伝わらないものになってしまいかねませんし、何より理科教育の方に悪影響を与えます。いかに道徳の授業とはいえ、こういういいかげんな論理展開で何かを結論づけるようなことをしては、せっかく算数・理科・社会等の授業で科学的思考や論理を教えている意味がありません。

 ○○先生にお聞きしたところ、このような問題点のある授業であることも、新聞紙上・学会などで問題点が指摘されていることも御存知でなかったようです。内容については他の先生と話し合った上で決めたということで、他の先生が道徳の授業で同様のことを行う可能性はあるのかと質問しましたところ、その可能性はあるという御返事でした。
 そこで、今後のことも含め「水授業」の不適切さを全職員の皆様に(おそらく憂慮されている教員もいらっしゃると拝察します)十分にご理解頂きたいと願い、この手紙を書きました。

 最初にも申しましたが私は大学教員です。今大学で学生に教育する時、学生達に科学的思考を身につけさせるにはどのように教えていけばいいのか、ということに腐心しております。昨今の理科離れ傾向のためか、理学部の学生ですら正しい科学的思考を身につけないまま大学生まで育ってしまっている者もいます。これは今後なんとかしなくてはいけない、日本の教育の重大な欠陥です。
いわゆる「1本5000円のナントカ還元水」のような、さしたる効果があるわけでもない高い水を売りつけるなどという詐欺まがいの商売が幅を利かしています。子供達がそういう社会の中で将来を生きていくために必要な科学的思考力と論理的判断力を育むことも、教育に携わる人間にとって重大な責務であると考えています。

 非科学的な題材をあたかも科学的真実であるかのごとく装って教えるということも、事実をねじ曲げてでも自分の主張を通すような似非論理を容認することも、●●小学校という教育の場に持ち込ませないよう、要望します。これは一人の生徒の親としてのみではなく、科学教育の一環に携わっている人間としての切実なる願いです。

 長々と苦言を呈させていただきましたが、当方では長女(卒業生)と長男を●●小学校に長年通わせており、先生方が熱心に教育・指導を行って頂いている事は十分に承知しております。その点については、大変高く評価、感謝しておりますことを付け加えさせて頂きます。

以上、適切な判断のもと、今後に向けてご配慮頂けるよう、切にお願いする次第です。

琉球大学理学部
物質地球科学科講師
前野昌弘

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文中にあるリンク先のシンポジウムの資料もぜひあわせてご覧ください。

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